Magic of Love

Magic of Loveの転調と分数コード

Magic of Loveは転調と分数コードが特徴的な曲である。始まりの部分のキーはF#mあるいはAであるが、すぐにC(あるいはAm)のキーに変わり、あとは主にこの2つのキーを行ったり来たりする。

AのキーとCのキーは短三度の関係にあるが、Cと同一の構成音の短調(並行調)がAm、その同主長調がAであり、短三度関係での転調には同主転調が必然的に含まれる構造になっている。この転調は、感覚的に言うと、「明るくなったり暗くなったり」という感じが出る転調であり、中田氏の作品に極めてよく現れる。

Keyboard

ところで、Aの短三度下はF#で、これは五度圏で数えるとCから最も遠いキーになる。実は、Magic of Loveでもサビの最後で本来F#mの和音で終始するはずのところを、F#の和音に終始させる部分があり、一瞬だがF#のキーが現れている。そして、その後、すぐにキーがCの「キーボードソロ」に突っ込むため、ここでは最も遠い調性であるF#からCへの転調が起きていることになる。

一般に、転調では転調前後の調性に共通する和音を使って、二つのキーを結ぶ「ピボットコード」という「コード」を用いる技法がある。この曲ではどちらかというとこのようなピボットコードを置かず、突然転調する感じを意図的に出しているように思われるが、二番目の「キーボードソロ」では、「シーラミー」というフレーズが色々な音色で繰り返される中で転調が起きるため、このフレーズ自体がピボットの役割を果たしているといえるかもしれない。

もう一つ、この曲の中で特徴的に響いているのが、G/Aという分数コードである。フュージョンなどでよく用いられるコードで、このコードを聴いただけでもフュージョンのテイストが感じられる。そして、エンディングの一発コードもB/C#、これと同じ分数コードになっている。

Original: Magic of Loveの転調と分数コード(2013/05/01)
PTO: ver1.0 (2014/03/23)